No.2 携帯電話[ケータイ]でこそ使いたいスラング

By 佐々木南実

アメリカの今日のライフシーンをスナップショットでお届けするSLANGスクラップ、第2回のテーマは、「携帯電話」です。
アメリカでは、現在、携帯電話が爆発的大ブームです。私がここサンディエゴにやってきた去年の夏から比べても、街の中で見かける携帯利用者の数は激増しました。車を運転しながら、スターバックスでコーヒーブレイクしながら、スーパーの通路で安売りの品を吟味しながら、大きい割には液晶画面がちっちゃーい携帯電話で、アメリカ人のみなさん、嬉々として会話していらっしゃいます。
サラリーマンが専用のホルダーで、ベルトに装着しているのも、ケータイ創生期のほほえましい“自己主張”でしょうか。

携帯電話はcell phone 以外ほとんど通じない

  「アメリカでの携帯電話の普及が異常に遅れているのは、通常の電話のサービスがあまりにもすばらしく、携帯電話を持つ必要性を感じなかったからだ。」と、私のクラスの教授は力説していましたが、説得力に欠ける説明です。ちなみに彼がここで「通常の電話サービス」を表す言葉として使ったのは「copper」 でした。地面の下に張り巡らされた銅線を指しているのです。

The copper is so good that most Americans didn t even feel the need for a cell phone.

 「携帯電話」は、「cell phone」、あるいはただ単に「cell」。これ以外は、まったくといっていいほど使用しません。名刺などに「mobile phone」とか 「cellular phone」、「handy phone」などと印刷している人がいたら、そっと注意してあげてくださいね。(ただし、イギリスではmobile, cellularもok)
 ところで、少し前、あるティーン雑誌で「Are today s teens too wired!?」と題して「ティーンのデジタル通信度」を調査していましたが、高校生が持っているという通信機器は、一位はポケベル、二位がパームパイロット、三位が携帯電話でした。この題名の「wired」は、もちろん、電話線そのものを表す「wire」、そして針金の「wire」、盗聴の「wire」など、いろいろな意味を引っかけたものです。「wired」はスラングで「神経が尖っている」というような意味。というわけで、このタイトルを和訳するとすれば、「最近の高校生は感度よすぎ!?」とか、「つながりすぎ!?」、いろいろ考えられます。
 この話題でアメリカ人の友人と話していたときに、日本ではケータイで e-mail は当たり前なので、女子高生は授業中にメールで会話しているのだ、と教えてあげたら、「昔はそっと手紙を回したものだけど!」(That s a whole new way of passing notes! ) と感激していました。

「wired」(神経が尖っている)の例文:
I am really wired after drinking five cups of coffee.
 「コーヒー5杯も飲んじゃって、すっかり頭が冴えちゃった。」

行くあてはなくても電話の締めはgotta go

 さて、当然のことですが、電話での会話にもさまざまなスラングが登場します。まず、第一声の「もしもし」は、やはり「Hello」が主流 (ビジネスの場合はフルネームを早口で名乗る出方を好む人も多いようです) ですが、友達からの電話だとわかっている場合は、いきなり「what's up!」「Yo!!」 などと出るときもあります。結びの挨拶の「じゃーね」は「gotta go」、あるいは「check ya later」、「peace out」など。「peace out」は、男の子が使うことが多いです。
 アイドル歌手 Aaron Carter のアルバム Aaron s Party (Jive) の中のinterlude(曲と曲の間のスキット) に出てくる電話の会話でも、結びの挨拶として「peace out」と彼が言っています。Aaron のお兄ちゃんのいる Back Street Boys のアルバム Black & Blue (Jive) の中の The Call という曲の中では、「gotta go」 が連発されていますよね。
  あとからまたかけるね、と言うときは "Hit ya later" などと言います。
  楽しい着メロを入れている人も、多くなりました。結構頑張ってるな、という感じで和音を使ったものから、ほとんどなんの曲か判別できないほど地味な「単音」のものまで、さまざまです。
 その「着メロ」ですが、英語では、意外と普通に「ring tones」というのです。これに関しては、日本語のほうがずっとスラングっぽい言葉ですね。 普通の電話の呼び出し音も ring tones(あるいはringer)ですから、つまり、ケータイに限らず呼び出し音を自分で選べるなどというコンセプト自体が、アメリカ人にとっては新しいということですね。普及するに従って、新しい呼び名が出てくるのかも知れません。
 今後もますます熱くなりそうなアメリカ携帯電話ブーム、目が離せません!

電話での会話 (若者・友だち):
A: Whaaaaat s up!?
 (もしもーーーし)
B: Yo man,what up?
 (よぉ、なにしてんの?)
A: Just kickin it at home bud. (*1)
 (うちでだらだらしてるだけ)  { bud は友だちに対する呼びかけの言葉}
B: Wanna go dancin tonight? The new club downtown is phat! (*2)
  (今夜踊りに行く? ダウンタウンの新しいクラブ、かなり良いみたいよ)
A: Na, like I ll just chill. (*3)
  (てゆーか、いかねぇ。うちでまったりするでしょう)
B: Cool man, check ya later.
 (オッケーわかった。じゃーね。)
A: Yeah dude, peace out.
 (じゃーね)

Remarksモ
*1 : kick it = 何もしないでリラックスしていること。同義語= hang out, hang。 上記3種は、何人かの友だちの仲良しグループでリラックスしているときにも使うし、ボーイフレンドやガールフレンドの 部屋 でゆっくりしているときにも使います。 When we first hung out, the video he borrowed was totally my favorite. (初めて彼のうちでゆっくりしたとき、彼がレンタルしてくれたビデオが、もう超私の大好きなやつだったの。)
*2 : Phat = 大変よい、魅力的。場所などに対して使われるほか、人に対しても使用。 That chick is phat!  (あのコ、イケてない?(平板))
*3:Chill (chill out) = リラックスする、落ち着く。 同義語= veg out
Let's chill out with some brewskies tonight.  (今夜はビールでも飲んで、ゆっくりしようよ)
"brewskies"はビールのこと。醸造の"brew"の発展形として生まれたスラングでしょう。
 




(初出: イカロス出版刊 「通訳・翻訳ジャーナル」 2001年5月号)

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